自立、という言葉がある。
よく、経済的な側面から語られることが多い言葉であるが、ここで書くのは精神的な自立についでである。
私は、昔から早く自立した人間になりたい、と思いながら生きてきた。
なぜそんなに生き急ぐようなことを考えていたのか、今となってはよく分からないが(笑)。
自分で考えることや、周囲の人々の言動を観察して、この定義にたどり着いた。
自立とは、「じゃあどうする?」を続ける力のこと、である。
私の自立体験をひとつ。
私には、生まれつき障害をもった兄がいる。
小さいころ、よく耳にしたのが障害についての隠語である。自分の兄のことを言われているわけではないが、隠語が聞こえてくるたびに、「不愉快だ」「うるせーな」と強い嫌悪感を抱きながら過ごしていた。
しかし、私はその気持ちを内にしまい込んだままで、発することをしていなかった。
兄弟の話題になるのが嫌だと思うだけで、何もしていなかった。
当然、日常は変わらない。相変わらず隠語が聞こえてくる。
ある日なのか、ある時なのか、何がきっかけかもさっぱり覚えていないが、自分に問うた。
「じゃあどうする?」
何も変えない自分、何も変わらない世界。
「じゃあどうする?」
それで、こうしてみた。
自分の兄が障害をもっていることを、まったく躊躇することなく話すように、行動を変えた。
すると、こうなった。
私の周りから隠語が聞こえなくなった。正確には、ものすごく減った、かもしれない。
きっと、私に気を遣ってのことだろう。
でも、それでいい。
そうやって、一人のことを想像し、配慮なき言葉をつかう場面が、一つずつでも減っていけば、前進である。
嫌なことや上手くいかない場面があるとき、いくら正論や正義で考えても、日常は変わらない。
自分から何か変化を起こすことで、他人や社会が少しずつ変わっていく。
それは時に、行動を減らすことかもしれないし、逃げるという選択を取ることかもしれない。それでいい、変化させることに意味がある。
あなたも私も、「じゃあどうする?」
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